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2008年01月14日

Yちゃんと砂時計

部屋の掃除をしてたんです。

理由は特にないんですけど、持ち物が増えてきて収納スペースの許容量をオーバーしちゃったんで。

いらないものを捨てちゃおうってことで、掃除していたんです。

押入れの奥には、ずいぶんと懐かしいものが沢山ありましてですね。

学生時代に使っていた教材。

黄ばんだアルバム。

大昔の音楽カセット。

などなど。

色々出てきまして。

もう全部処分しちまえって感じで。

今となっては不要なものばかりだと。

次々と掻き出していったわけなんですが。

その中に、小さな小箱があるのに気付きまして。

思わず、その手を止めたんです。

プラスチックでできた安っぽい小箱の中には。

これまた安っぽいプラスチック製の砂時計が…。

こんなの、持っていたかなー?

と、しげしげと眺めていたのですが。

時計の底に彫られたイニシャルを見て、全てを思い出しました。


今日はそんな昔話。




中学1年の頃です。

私の席の隣にYちゃんって女の子がいました。

中学一年といえば、女と男は別れて遊ぶものなんでしょうけど。

私の通う学校では、そんなこともなく。

男女入り混じってワイワイと騒いでいたんです。

で、その中の一人がYちゃんでして。

活発な子でしてね、男顔負けの元気さで私のいる仲良しグループのリーダーみたいな扱いだったんです。

中学生は席の近い人に恋愛感情を抱く。

という俗説があるようですが、私も例に漏れず。

Yちゃんラヴィーって感じで。

友人に。

Yちゃん、かわいー。

を連呼してウザがられていた記憶があります。

そのYちゃんは絵がとても上手でして。

漫画家になるのが夢だとか言ってたように思います。

あれ? 小説家だったっけ?

まあ、どっちかね。

で、絵が上手いんなら漫画を書いてくれと。

私を主人公にした漫画を書いてくれと。

頼んだら、書いてくれましてね。

もうラヴィが止まらないって感じで。

友人らに。

「もう結婚する、結婚するよー」

と連呼してウザがられた記憶があります。

まあ、ここまでストレートに恋愛感情を表現していれば。

当然Yちゃんにも気持ちは伝わっているわけです。

ところがなかなか返事を返してくれなくて。

好きだー。

って言っても。

あははー。

と切り返され。

どういう返事なの、それ?

と当時はずいぶんと悩んだものです。

まあ、遠回しに断られていたんですけど。

子供だった私は気付かずに、楽しい恋愛生活を夢見ていたのです。

そんな時に事件が起こりまして。

まあ。

転校することになったんです。

私が。

嘘です。

Yちゃんが。


その話を耳にしたとき、信じられずに教えてくれた友人に噛み付いたことを覚えています。

しかしそれが先生の口から伝えられると。

もう号泣ですよ。

私だけじゃなくて、仲良しグループのみんなが大泣き。

それだけ彼女はみんなから愛されていたんですね。


Yちゃんが転校する日。

クラスで送別会が行われたのですが。

別れたくないよー、と、

泣きじゃくる私に、Yちゃんが近寄ってきました。

Yちゃんは手に何かを持っていました。

砂時計でした。

小箱に収められたプラスチックの砂時計でした。

そして桃色の手紙。

私はYちゃんを見ました。

これは一体どういう意味があるんだろうと。

Yちゃんは、優しく微笑んで言いました。



「○○君に渡しておいて」





あれから十数年。

砂時計は私の手元にあります。

理由は簡単。

渡すの忘れてました。


ごめーん。


手紙は。

紛失した。


ごめーん。



ごめんよ、Yちゃん。


今から渡そうか?
ラベル:思い出 砂時計
posted by 水卿 at 23:30| Comment(2) | TrackBack(0) | 思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月30日

山と爺さま

夏のことでございます。

燦々と降り注ぐ太陽が、山の木々を大いに沸かせ。

深緑さえ眩しく映る昼下がり。

人里離れた山中に、その爺さまはおりました。

ねずみ色の作業着に身を包み。

一本一本丁寧に樹木の状態を確認しては。

幹を叩いたり、叩いたり叩いたり叩いたりして一喜一憂しております。

知らない人が見れば、認知症でアレな人と勘違いすることでしょう。

しかし樹木に関する仕事を営む爺さまにとって、大事な大事な毎日の日課なのでございます。

その目は優しさに満ちており、爺さまが樹木をどれだけ大切に思っているかを窺い知ることができました。

にぎやかな蝉の声を背中に浴びながら黙々と作業を続けます。

もう何本の木を確認したことでしょう。

おそらく本人も分かっておりませんので、私が知っているはずはございません。

それほどの木々を見てまわったのでございますから、爺さまの顔に疲労が色濃く見えたのも無理なからぬことでしょう。

爺さまは近くに大きく平らな岩があるのを見ると、腰を下ろそうとしました。

しましたが、高齢で視力の衰えていた爺さまです。

目測を誤り、そのまま後ろ向けに引っくり返ってしまったのです。

腰をしたたかに打ちつけ、爺さまは顔を歪めました。








爺さまの家には婆さまがおりました。

いつまでたっても帰ってこない爺さまを心配しておりました。

毎週欠かさず観ているTV番組が終わった頃。

爺さまを探しに、一人、山へと向かうのでした。


「爺さま、爺さま、返事しておくれ〜」


幸いにして夏の頃にございます。

まだ日は沈んでおらず。

山中にあっても道を見失うことはありませんでした。


「爺さまや、爺さまや、どこにおりなさる〜」


しばらく進むと、軽トラックが停めてあるのが目に入りました。

爺さまがいつも乗っている軽トラックです。

しかし爺さまは乗っておりません。

婆さまは山の中を探し続けました。


「爺さま、爺さま、おったら返事しておくれ〜」


その時です。

どこからか声が聞こえたような気がしました。


「爺さま、爺さま、そこにおりなさるんか〜?」



「‥‥‥‥」



「‥‥‥‥」



「‥‥‥‥」



幻聴でした。




婆さまはため息をついて立ち去ろうとしました。

と、その時。


「ワシはここじゃ〜」


爺さまの声です。

今度こそ間違いなく爺さまの声がします。

婆さまは声のする方へと近付いていきました。

そこには、大きな岩の傍に座り込んでいる爺さまがおりました。


「おお爺さま、そこにおったんか」


婆さまは安心して家へと帰りました。





息子達が仕事から戻ると婆さまが何かしておりました。

何かは分からないのですが、何かしておりました。

しかし爺さまの姿が見えません。


「婆さま、婆さま、爺さまはいずこ?」


「山におった」


「まだお帰りになられぬのですか?」


「まだ座っとるんかの?」


「え?」



それからは大変な騒ぎでございます。

一族総出の大捜索が始まったのは言うまでもありません。

頼りになるのは婆さまの記憶のみという頼りなさ。

しかも先ほどとは違い、とうに日は暮れており、明かりの無い山中は真っ暗です。


「爺さま、爺さま、どこにおりなさる〜」


皆、大声を上げて爺さまを探します。

逸れないようお互いの位置を確認しながら山の中を進みます。

木の根につまずき、虫に刺されながらも爺さまの無事だけを祈って探しました。

一時間ほど歩き回ったでしょうか。

先頭を歩いていた息子が叫びました。


「見つかったぞー!」


その声に皆が集まってきます。

大きな岩にもたれかかるように爺さまは眠っていました。

なんとか大事に至る前に見つけることができたようです。

誰もが胸を撫で下ろすのでした。



家へ戻ってきた時、皆の顔には濃い疲労の色が滲んでおりました。

それでもそこには安堵の表情が浮かんでいます。

とはいえ、まだ安心はできません。

何しろ爺さまの容態が分からないのですから。

とにかく本人に怪我の具合を聞いてみることになりました。


「で、爺さまは?」


「え、貴方が背負ってきたのじゃないの?」


「いや、知らんよ、お前は?」


「僕も知らないよ」


「水卿は?」


「いや、知らない」


「‥‥‥‥‥」


「‥‥‥‥‥」





「ってか、婆さまは?」






歴史は繰り返す。






ポリスメンの方々や近隣住民の皆様方のご協力のもと。

無事、二人が救助されたのは、さらに数時間後のことでありました。





風鈴の音色が涼やかに流れる夏の日のことにございます。



ラベル:日記 思い出 遭難
posted by 水卿 at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月28日

桃のような思い出

自転車で走り抜ける通学路の途中。

大きな塀で囲まれた赤い屋根の民家の庭先に。

一本の桃が植えてありました。

枝先は囲いを越えて道路まで突き出しており。

春にはやわらかな色合いの花が開き。

夏には熟れた果実の香りが歩道にまで漂っていました。

わざわざ大回りをして通う生徒もいるくらいで。

その美しさと香りは私達にとって魅力的だったんです。


あれから十年が経ち。

自動車で移動するようになり。

交通に不便なあの道は通らなくなってしまったのですが。

桃はいいから給料上げてくれって思うようになったのですが。

あの桃の木の下を通ることはないと思っていたのですが。

ひょんなことから、その機会が訪れました。



職場の先輩と遊びに行ったときのことです。

先輩が車で私の自宅まで迎えに来てくれる予定だったのですが。

待ち合わせの時間を過ぎても現れないので。

携帯で連絡を取ってみました。

話を聞いたところ。

この辺りの地理に詳しくない先輩は。

道を間違えてしまったらしく。

自分が今いる場所がわからないんだそうです。




とりあえず、周囲の状況を聞き。

大体の位置は分かったので。

先輩はそこで待機してもらって。

私が徒歩でそこへ向かうことになったのですが。





その途中。






あの桃の木の下を通ることになったのです。









十年前と同じように鬱陶しい葉。



十年前と同じように虫だらけの幹。



密集するように実る黄色い果実。







え?





あ…あれ?


何コレ?


こんなんだったっけ?


全然香りとかしないし。


いや。


落ちて潰れた果実からは匂いがしますけど。


確かに匂いはしますけど。


それにはハエが集っていますし。


何かが違う。


こんなんだった気もしますけど。


細部が微妙に違う。


全然違う。


もっと幻想的な。


爽やかなイメージだったと思っていたのですが。


何これ?






どうやら。



記憶の中で思い出が美化されていたらしく。



十年ぶりに見る桃の木は。



思い出と大きく異なっていました。





そもそも桃じゃないよ、コレ。








見なきゃ良かった。


そんな甘酸っぱい。


桃のような思い出。




桃のような、思い出。







で。


結局。


あれ何?


何の木?


アンズ?




ラベル:思い出 日記 記憶
posted by 水卿 at 13:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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